Cheap chic!~日々本能のまま~

「生活は簡素に理想は高く」をモットーに、毎日楽しく生きています。基本的に亀更新です。
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  [ 「誰も守ってくれない」(1/28・@TOHOシネマズ梅田)。 ]
2009-02-05(Thu) 00:27:49
20090205102747
感想を書くのがだいぶ遅くなったのですが。

試写会を観たじゅんちゃんや、初日舞台挨拶付き上映会に参加したにょりちから、「凄く深いよ」「ニコなら号泣するよ」「蔵はそんなにイヤなカンジじゃないよ」「蔵も松田兄もカッコイイよ」等と異口同音に勧められ、そのうち必ず観ようと鷹揚に構えていたのが居ても立ってもいられなくなり、予定を急遽返上して公開早々観に行って参りました。

モントリオール世界映画祭コンペディション部門・脚本賞受賞作「誰も守ってくれない」です。

平凡なイチ家庭の長男が殺害事件を起こしたコトを機に、容疑者の身内、警察、マスコミ、一般人の間に起こる出来事を、あくまで叙述形式として綴るドキュメンタリータッチの映画で、邦画としてはテーマ性も撮り方もかなり珍しいタイプと言えます。

撮影も、カメラを延々回しながら撮る特殊なやり方で行われ(日本映画ではまだ珍しい)、それに不慣れなキャスト陣は戸惑いながら挑んでいたんだとか。

そのせいか、やけにリアルに伝わってくる映像だったので、監督の狙いは効果的と言えよう。


内容はかなりシリアスなモノでした。

殺人犯の身内として世間の好奇や嫌悪の目に晒されながら生きるコトを余儀なくされる家族、そしてそれを取り巻く苛酷な環境、…これらは少なくとも今の私には全く知り得ない世界であるからして、どれも想像世界にしか過ぎないワケで、だからこそ、観る前から重苦しい展開が想定されて気持ちが折れそうだったんですが、実際観てみたら決してそんなコトはなく、何だかジンワリ温かいモノが体内に流れてくるような感覚の中、柔らかに観終わりました。

虚ろなカンジや空々しいカンジといったモノは、ほぼナシ。カタルシスも味わえる。

この感覚は恐らく、同映画が“誰目線”で描かれているか分からない、むしろ“誰寄り”でもなく、ただ時系列に沿って事実が淡々と綴られていくようなシンプルな創りだからこそ、得られるモノなのかなと。

かと言って雑ではなく、至って丁寧に、それ相応の迫力を持って、体当たりでぐいぐい攻め込んでくる部分もあり、静と動とが抜群のバランスで混ざり合っているので、引き込まれながら観るコトが出来る。

且つ、一線引いて、イチ傍観者として観るコトも出来る。

だから、心に響く。

このあたりの見せ方が秀逸だなと思いました。

勿論、ハナシの流れ的にはどれもこれも心に痛く、やり切れなさでイッパイで、無情感を常に感じさせるし、渇いてカサカサした気持ちにもさせられるんだけど、最終的には希望に繋がっていく辺りに救いがあり、前向きな気持ちになれるんですよ。

こういう展開は凄く好みです。

それにしても、世間はかくも“他”に冷ややかなモノなのか。

もしコレが自分だったら…という目線では考えないのね。私も然り。

戸惑う家族の心情を察するコトなくあくまで機械的に現状処理を行う警察、格好のネタとばかりに飛び付くマスコミ、傍観者=野次馬に成り切る一般人、裏切る友達、利用する人達。

容疑者の妹・沙織は、一夜にして幸せな生活から一転して、こうした環境の渦中のヒトとなってしまう。

一家は散り散りになり、母は自殺、世間やマスコミ・ネット社会などの“目”に終始晒され追われ、友達からは煽られ、大切なモノを失いながら、精神をギリギリまで追い詰められる。

警察に言われるがまま、自分の意志を捨ててひたすら逃げなければならないこの状況をどうしても理解出来ず、混乱して大人を困らせる沙織の姿は、狂気にも似た孤独や悲哀を痛感させるモノであり、また、時代の象徴でもあるようで、ホントに痛々しい。

彼女の言動全てが心にいちいち響くんですよ。

この繊細な難役を、志田未来さんは、思春期特有の危うさを持って、多感に演じていたと思います。

自分の思いをたやすく口にしなかったり、張り詰めていたり、極端に開放的であったり、簡単にヒトを信じたり、簡単に裏切られたり。

こうした若かりし頃独特の掴みドコロのなさ、不安定な雰囲気というのは、成長するにつれて薄れゆき(そうでないヒトもいる、そういうヒトは成長し切れていないと言える)、いつしかヒトはふてぶてしいまでにも自己を主張出来るようになる為、ある程度社会経験を積んでから受ける衝撃だとまたひと味もふた味も違うのでしょう。

でも、15歳で突き付けられる現実としてはあまりに苛酷。受け入れられないのもムリはない。

この先、沙織がどのように育ち、どのように生きていくのか、非常に興味深いトコロであります。

そして、沙織が事件後に最初の一歩を踏み出す手助けとなる勝浦刑事。

彼は、容疑者の妹を守るという複雑な使命を与えられるワケですが、そんな彼自身もまた、過去の某事件に囚われながら、はたまた家庭は崩壊しかけているという環境下にあって、深い闇の中をさ迷いながら生きている。

君塚監督が勝浦のコトを「ザラザラした男である」と表し、「佐藤浩市に当て書きした」と言っていたのが大きく頷けるくらい、佐藤さんの勝浦刑事は佐藤さんぽかったです。

沙織と勝浦が徐々に心を通わしていく過程も、演技派なフタリである故不自然でなく、しかも、確かな言動でお互いを理解し合うようなオオゲサな場面が何処にもない為、非常に見易かったような。

それでいて結局、この物語がフタリの心の葛藤や交流を軸に描いた人間劇であるコトを理解出来るので、なんてしっかりした筋運びなんだ、そして、なんてピッタリ配役なんだと感動しました。

そりゃモントリオールで賞も獲るわ。

キャスト陣も、添え物に近いようなポジションで後輩刑事を演じていた松田龍平やら、出世欲ギンギンの刑事に佐野史郎やら、機械人間的な刑事に津田寛治やら、心理カウンセラーの木村佳乃やら、その他なかなか渋い面々で、この映画の硬派たる所以をより強く印象付けられました。

沙織の友達役の冨浦君は今回もアクが強かったね!ホントは可愛くて良い子なのにね。でも、ああいう役を演らせると抜群に上手いね!


さてさて、蔵様ですが。

事件を追う新聞記者という、まあこれまたよくお似合いの役柄。

これを撮っていた時期が「20世紀少年」の撮影と重なっていて、めちゃめちゃ大変だったらしいです。ストイックな役者魂を常に見せ付ける蔵様が「大変」だと言うからには、ホントに大変だったんでしょうね。しかも、ビミョーに「鹿男」や「斉藤さん」と被ってね?凄いね、蔵様。

しかしながら、そんな大変さを微塵も感じさせない自然な演技で、相変わらず“役”として強い存在感を放ちながら、作品中に存在しておられました。

梅本の執拗さには仕事熱心さ故の偏狭ぶりみたいな怖さを感じるものの、蔵様が演じているからか、かつて自分が関わっていた世界だからか、特に嫌悪感は抱かなかったですね。それよりも、他を抜くべく瞬時にアタマを働かせる有能さにすげーなと驚きっぱなし。

勝浦にマイクを向ける時のカオは実に怖かったけど。マイクがナイフに見えたけど。

梅本にも自分の生活があり、生活の為に働いており、子供は登校拒否という悩みも漫然と抱えている。そうした辺りに人間性を垣間見られたりして、監督が“誰目線でもない”という部分を一層強く感じられました。

ただ、一緒に観ていたオーモチがひたすら嫌悪感を抱いていたので、悲しみ~。

「役だから!」と言い返しつつ、そこまで嫌がられるような演技を展開する役者蔵様を心から尊敬しました。←何処までも蔵様寄り。

余談ですが、オーモチは蔵様の一種変わった役ドコロしか目にしていないので、他にも沢山ある好青年役の蔵様をお見せして一矢報いたいトコロではあります。機会を虎視眈々と狙います。

それにしても、マスコミをも追い抜く情報社会ってスゴイなあ。恐ろしいなあ。情報の錯綜がヒトの人生を変える勢いも持っているから、放つ側は責任重大ですよ。


ところで、全編シリアスな中で唯一笑ったのは、ネット住人に扮していたムロツヨシを見た瞬間でした。ムロツヨシ!君は何故そこにいる?笑いを誘うからこのテの作品には出たらいかん!


で、最後まで分からなかったのがタイトルなんですが。

「誰も守ってくれない」なんて、内容の濃さに比べると、分かり易過ぎるというか短絡的で軽いというか、そのままじゃん!と呆れていた私。

帰宅し、お風呂に入りつつ考えていたらハタと閃きまして。

本当に「誰も守ってくれない」ワケではなく、いやいや守ってくれるんだよ、人間はヒトリじゃないんだよ、だけど、時として心ないヒトも中には居て、そこから打ち勝つには“自分自身”しかないんだよ、だから「誰も守ってくれない」という強い精神が必要なんだよ、そしてそれは万人に通じるコトなんだよ、みたいなコトをこの映画は訴えたいんじゃないかなと。

更には、加害者に向けて、君ヒトリが浅はかに起こした事件で、身内や周囲の人々が人生を一転させられるくらいの大きな渦に巻き込まれるんだよ、君だけが罪を償えばイイワケじゃないんだよ、と訴えかけるような、何処か教訓めいた部分…メッセージも孕んでいるんだと思う。

素晴らしいなと思いました。

出来るだけ多くのヒトに観て貰いたいと思うくらい、とても上質な映画でしたね。


星5つ。
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